新しい自分との出逢い
果てしなく広がる夜の静寂な世界。その彼方に忽然と現れた一筋の光が、やがて眩しく美しい光芒となって、私とその周りの世界を明るく照らし始めました。
平成19年6月。ある人物との出逢いをきっかけに、上本京子は自分の中に不思議な変化を感じました。それが、夜明けの光が放つ躍動感をもった力強い変化だと気付いたのは少し後のことでした。
その頃、上本はテレビ・ラジオのアナウンサーやナレーターとして豊かな経験を積み重ね、結婚式・ファッションショー・クラシックコンサート・セミナー・シンポジウム等の各種司会を手掛けて、誰もが認める「司会と語りのプロ」として活躍していました。
平成14年に葬儀司会業を開始しますが、それはあくまで自分の司会業の幅を広げる程度に考えて始めたことでした。
しかし、そんな上本に衝撃が走ります。自分に『足りないものがある』ことを気づかせてくれた、ある人物との出逢いによって...。
それは、著名な葬儀司会者でした。彼の口から出たのは「君の司会にはやさしさが足りない」というショッキングな一言でした。
「それまで、ある程度の自信と、それなりの評価をいただいていましたが、技術に走り、慢心している自分の“本質”を見抜かれたような気がしました…」
その時、プロとしての意地が、高い次元を目指したいという意識が、「葬儀司会の世界を見極めてみたい」という気持ちに上本を強く駆り立てたのでした。
平成20年4月、上本はその人物が経営する葬儀会社に入社して、葬儀司会の真髄を学ぶことになります。
今から思えば、偶然の出逢いによって導かれた“新しい自分との出逢い”だったのかも知れません。
しかし、それは上本にとって生涯忘れることのできない記憶となりました。
葬儀司会に必要な「やさしさ」とは
「やさしさが足りない」と言われた上本は、どうしたら"やさしい"司会ができるのか、しばらく悩みました。技術で補えるのではないかと、試行錯誤を続けました。
しかし、どうしても答えが出ません。
プロの司会者・ナレーターは、言葉づかい、話す緩急、間の取り方などの基本的な技術に加え、会場の空気を読みながら臨機応変に式を進行していくのは当然のことです。
しかし、それだけでは司会というよりも進行役であり、人の心に響く葬儀の司会者には決してなれないということに、やがて上本は気づきます。
そして、師と仰ぐ社長から、"こうあるべき"という葬儀に対する思想や哲学を学び、貴重な体験談を訊き、具体的な実践を重ねていくうちに、周りから「以前と何か雰囲気が変わってきましたね」「やさしくなりましたね」と、言われるようになっていきました。
自分に足りなかった"やさしさ"とは何であったのか?
その答えは自分の中にありました。
「やさしさ」とは、技術で解決できる問題ではなく、本質から自然に生じ、滲み出るもので、そこには「人の悲しみ」を理解しようと努力する姿勢が何より重要なのです。
そして、そのことに気づいた瞬間から、技術を超えた「ぬくもり」が生まれ、悲しみの淵に沈んでいる人をも、動かすことが出来るようになるのではないでしょうか。
悲しみのプロとして
大切な方をなくされ、悲しみに暮れるご遺族の方々に、ひと時であっても「不幸の中で不幸でない時間と空間」をご提供することが、どれほどご遺族の心のなぐさめとなり大切なことか、上本は理解できるようになっていきました。
「悲しみの中でやさしい時間と空間」を・・・
そうすれば、ご遺族だけでなく、ご参列いただいた方にも"温かい思い出を形見"にして、お帰りいただけることでしょう。
「人として生まれ、懸命に生き、与えられた時が尽きてこの世を旅立っていく…」
そのひとりひとりの凝縮された重い命を、この世から送り出して差し上げる「葬儀」は、人の一生で最も大切で崇高な儀式です。
悲しみに満ちた時間と空間を"やさしさ"に包むことができた時、ご遺族の方に感謝の言葉をかけていただいた時、そこに、心から幸せを感じ、葬儀の仕事を誇りに思う上本がいました。
“新しい自分との出逢い”に導いてくれた運命に感謝しながら。
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